(28)親切は決して
他人のためならず、
相手を満足に生かせ
渡辺崋山の『商家の銘』
出入りの商人が、あるとき、渡辺崋山に商売の秘訣をたずねた。
快く崋山は『商家の銘』を書き与えている。
(一)召使より、早く起きよ。
(一)10両の客より、100文の客を大切にせよ。
(一)買人が、気にいらぬ品を返しにきたならば、売るときよりも丁寧に受けよ。
(一)繁盛にしたがって、ますます倹約せよ。
(一)小遣いは、1文より記せ。
(一)店を開きたるときのことを忘るな。
(一)同商売が近所にできたらば、懇意を厚くし互いに励めよ。
(一)出商を開いたら、3カ年食料を送れ。
いつの時代でも、早寝早起きは健康にもよし、成功の秘訣である。
ややもすると金持ちを大事にし、貧乏人をおろそかにしがちであるが、貧しい人たちを大切に、その味方になってあげなければならない。どんなに自分の都合が悪くとも、常に相手の立場に同情し、丁寧に応対することが大切である。
大勢の人々から尊敬されればされるほど、身の言行をつつしまなければならない。
どんな1枚の紙きれでも、人生の目的を果たすためのものだから、粗末にするのは禁物である。
いくら恵まれ成功しても、常に初心を思い出し、懈怠横着になってはならない。
ライバルが現れたら、もっと努力精進せよと、自己を磨いてくれる菩薩と拝んでゆくことが肝要である。
親切は決して他人のためならず、相手を満足に生かすまで、できうるかぎりの努力を惜しんではならない。
(高森顕徹著 光に向かって 100の花束より)