(71)下等の人間は舌を愛し、
   中等の人間は身を愛し、上等の人間は心を愛する

光に向かって

上等の人間は心を愛する(光に向かって)

 アメリカの大統領に、クリブランドが当選したとき、獄中の男の一人が長嘆息している。

「やはり、あの方が当選されたか。立派だったものなぁ」

「おまえは、クリブランド氏を知っているのか」

 看守が不審に思ってたずねると、
「中学卒業のときは一、二を争って出たが、祝いに酒飯にいこうと誘ったところ、クリブランド氏は“味よきがゆえに断つ”と言って、途中から帰ってしまった。おれは一度ぐらいなんだ、これが最後だ最後だ、が、たび重なって、ついに今日のように雲泥の差が生じてしまったのだ」
と述懐したという。

 同じ身体を持ちながら、同じ才能を有しながら、目的を達せずして奈落に沈んだのは、勇猛精進の克己心がなかったからである。

 下等の人間は舌を愛して、身を愛さぬ。

 中等の人間は身を愛して、心を愛さぬ。

 上等の人間は心を愛するがゆえに、克己して勇猛精進する。

 偉業を成就せんと志す者は、すべからく衣食に心を奪われてはならない。

 頂上を極める者は弊衣粗食、よく初志を貫徹する者である。

 

高森顕徹著 光に向かって 100の花束より)


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更新履歴

2015.01.08あわれむ心のないものは恵まれない~試された親切心(光に向かって)

2014.01.22すぐ100万円を持っていったのは、なぜか~恩知らずになりたくない(光に向かって)

2014.01.22殺して生かす ~相手を裏切り、ののしられ、迫害も覚悟しなければならぬこともある(光に向かって)

2013.11.25甚五郎のネズミはうまかった~技量と智恵(光に向かって)

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2013.09.30世界一おいしいご馳走ができあがりました、と料理人は言った(光に向かって)

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2013.08.24生活の乱れた学生の更生法~大学教授のたくみな指導(光に向かって)

2013.07.25下等の人間は舌を愛し、中等の人間は身を愛し、上等の人間は心を愛する(光に向かって)

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2012.10.04おまえはなぜ、3階を建てんのだ 本末を知らぬ愚人(光に向かって)

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2012.08.06富んでも、昔の貧しさを忘れ、おごるなかれ 岩崎弥太郎とその母(光に向かって)

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2012.04.10これへ、その下肥とやらをかけてまいれ、とバカ殿 偶像崇拝(光に向かって)

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