(46)一番好きな人を生命がけで育ててくださった
   お母さんが、一番好きです

光に向かって

 あるところで、熱心に仏法を求めている娘を、嫁にもらった。

 初夏の夜、雷で主人を失った姑さんが、激しい稲妻と、天地にとどろく雷鳴に、ひとり蚊帳の中で恐れふるえていた。

 かねてから雷ノイローゼの母親を案じて、2階からおりてきた嫁が、さっそく、蚊帳の中に入り、母親をしっかり抱きしめてなぐさめた。

「お母さん、蚊帳の中にいれば心配いりませんよ。雷は電気ですから、麻の蚊帳には通じません。死ねば一緒です」

 なかなかもどらぬ妻を案じて、おりてきた息子が、母親を抱いている妻を見て感動した。

「おまえはあんなに、お母さんが好きかい」

 部屋に帰って、夫の問いに妻は、

「あなたが世界中で一番好きです。一番好きな、そのあなたを、生命がけで育ててくださったお母さんですから、一番好きです」

 こんな嫁を迎える家は幸せなり。

 こんな妻に恵まれた夫は幸せなり。

 

高森顕徹著 光に向かって 100の花束より)


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更新履歴

2015.01.08あわれむ心のないものは恵まれない~試された親切心(光に向かって)

2014.01.22すぐ100万円を持っていったのは、なぜか~恩知らずになりたくない(光に向かって)

2014.01.22殺して生かす ~相手を裏切り、ののしられ、迫害も覚悟しなければならぬこともある(光に向かって)

2013.11.25甚五郎のネズミはうまかった~技量と智恵(光に向かって)

2013.11.25だから青年白石は三千両を拒否した~信念は未来を開拓する(光に向かって)

2013.09.30世界一おいしいご馳走ができあがりました、と料理人は言った(光に向かって)

2013.09.30最初から負けていた~勝利のカギ(光に向かって)

2013.08.24大石内蔵助の13年間~先見と熟慮(光に向かって)

2013.08.24生活の乱れた学生の更生法~大学教授のたくみな指導(光に向かって)

2013.07.25下等の人間は舌を愛し、中等の人間は身を愛し、上等の人間は心を愛する(光に向かって)

2013.07.25牛糞を食わされた祈祷師(光に向かって)

2013.06.07笛を高く買いすぎてはいけない(光に向かって)

2012.10.04おまえはなぜ、3階を建てんのだ 本末を知らぬ愚人(光に向かって)

2012.10.04やめよ!やめよ!と突然、早雲は叫んだ なりきる尊さ(光に向かって)

2012.09.06まもなく、若い社員の一人が解雇された 排他は自滅(光に向かって)

2012.09.06猫よりも恩知らずは、だれだ 腹立てぬ秘訣(光に向かって)

2012.08.06人を身なりで判断はできない 一休と門番(光に向かって)

2012.08.06富んでも、昔の貧しさを忘れ、おごるなかれ 岩崎弥太郎とその母(光に向かって)

2012.05.30この娘を美しくないという者があれば、金子千両を出してやろう(光に向かって)

2012.05.30施した恩は思ってはならぬ。受けた恩は忘れてはならない(光に向かって)

2012.04.10己を変えれば、夫も妻も子供もみな変わる(光に向かって)

2012.04.10これへ、その下肥とやらをかけてまいれ、とバカ殿 偶像崇拝(光に向かって)

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